今何かと世間を騒がせている後継者の問題

  • 誰に会社を継がせようか。
  • 会社を子供に承継した方がいいのか。今の優秀な社員に承継した方がいいのか。
  • そもそも子供は会社を継ぐ気がない。
  • 会社を誰かに承継した後の従業員はうまくやっていけるのか。
  • 会社を売ろうか。
 等の問題が様々な所で勃発しています。
 
 中小企業・小規模事業者の経営者のうち、65歳以上の経営者は全体の約4割を占めています。
 中小企業庁公表資料によれば、2025年には団塊世代の中小企業経営者約245万人(全中小企業者の6割)が70歳を超え、その約半数に当たる127万人が廃業を予定しているとのことでした。
 中小企業庁は、このまま放置すれば約650万人の雇用と約22兆円に上る国内総生産(GDP)が失われるおそれがあるとしています。
この問題に対して、当事務所も黙って見過ごすわけにはいかず、この問題について全力でサポートしこうと決意し、執筆を開始しました。
 
 税理士としてできることは、まずは税金を抑えた円滑な事業承継です。平成30年4月には、事業承継について大改正が行われました。
 今回は、この税制改正について紹介させて頂きます。

1、会社の株を動かす時に発生する相続税、贈与税の猶予

 会社の株を、子供や第三者に譲る場合、税金が発生することがあります。
 そこで、税金が発生しないよう、円滑に承継できる猶予規定がありますが、
 今回、この納税の猶予について、要件が大きく緩和されました。

 対象株式数の上限撤廃   

 【改正前】   

  発行済み議決権株式総数の最大3分の2まで   
 【改正後】

  発行済み議決権株式の全株が対象に

 猶予・免除される税額割合 

【改正前】    

 対象株式に係る相続税80%猶予
【改正後】

 対象株式に係る相続税100%猶予

2、納税猶予対象者を拡大

 株を譲り渡す者と受ける者の対象者が拡大しました。
 これにより、スムーズに後継者に株の移動ができます。

贈与者・被相続人

【改正前】

 代表権を有していた者1名に限定
【改正後】

 代表者以外の複数株主からの贈与・相続の対象

後継者

【改正前】

 代表者1名 
【改正後】

 最大3名まで(代表者である必要あり)

 3、雇用維持の要件の緩和

  税金の猶予・免除受けるための要件として、事業承継した後でも、
  従業員の雇用を維持しなければなりませんでした。
  今回改正により、その要件が緩和され、事業承継がより簡易に
  なりました。
 
【改正前】

 5年間で平均8割の雇用を維持できなければ、
 5年後の時点で納税猶予打ち切りとなり、全額納付
【改正後】

 5年間の平均雇用が8割未達でも猶予が継続。つまり、
 この5年間縛りの要件は実質撤廃。未達の場合は、
 満たさなかった理由を記載。認定支援機関(当事務所は
 認定支援機関です)が確認。都道府県に理由報告。
                                               

 4、事業承継後に業績悪化に伴う納税猶予の打ち切り緩和

   事業承継後に会社の業績が悪化したことにより、解散した場合には、
   全額納税猶予額を納付する必要がありましたが、改正後は解散した
   時点の企業価値に基づいて税額を再計算し、猶予した時点の企業価値
   との差額を減免することになりました。
 
   以上が、今回の大枠の改正ポイントとなりました。
   ご参考までに。